居抜き物件 開業で回り道しない探し方3ステップ

居抜き物件 開業で回り道しない探し方3ステップ

居抜き物件で開業したいのに、内見を重ねるほど迷いが増えて決められない。そんな状態で困っていませんか? 居抜きは早い者勝ちとよく言われます。ただ、焦って申し込んだ結果、設備の入れ替えや造作譲渡費用で初期費用がかえって膨らむケースを、現場で何度も見てきました。この記事を読むと、居抜き物件を回り道せずに決める3つのステップと、造作譲渡費用や契約の注意点がわかります。筆者は店舗情報サービス株式会社代表の繁友健志です。宅地建物取引業者として店舗物件の賃貸借業務に1000店舗以上、店舗不動産の実務に10年超携わってきました。

目次

この記事のポイント

  • 業態に必要な設備条件(排気・給排水・電気・ガスの容量)を先に決めれば、内見する物件が数件に絞れて判断が早くなる
  • 前テナントの撤退理由を聞かずに決めると、同じ理由で売上が伸びない店をそのまま引き継ぐおそれがある
  • 造作譲渡費用は「設備の価値」より「前テナントが原状回復費を払わずに済む価値」で考えると、交渉の根拠を作りやすい
  • 造作にリース品や貸主所有の残置物が混ざっているのに所有権を確認しないと、故障したときの修繕費を自分で負うことになる
  • スケルトン返しの特約が付いている場合は、退去時の費用まで含めて初期費用を比べる必要がある

店舗物件選びで失敗しないための基準

居抜き物件で回り道せずに開業するには、次の3ステップをこの順番で進めます。①業態に必要な設備条件から逆算して候補を絞る、②内見で撤退理由と設備の状態を確かめる、③造作譲渡費用と賃料をセットで交渉する、の3つです。

ステップ やること 見送る判断の目安
①設備から逆算 排気・給排水・電気容量・ガス容量・坪数・家賃の上限を書き出す 業態に必要な容量が足りない
②内見で確認 撤退理由、設備の製造年、リース品の有無を聞く 撤退理由をはっきり答えない
③セット交渉 造作譲渡費用・保証金・賃料を総額で比べる 総額が資金計画の上限を超える

居抜き物件で開業するなら、立地より先に設備の容量で絞る

店舗賃貸借1000店舗以上の経験から言うと、居抜き探しが長引く人ほど、立地や内装の雰囲気から物件を見ています。居抜きで飲食店を出す場合、出せる業態はほぼ設備で決まります。見るべきは重飲食の可否、ダクトの通り道、グリストラップの有無、電気とガスの契約容量です。ここが合わない物件は、立地が良くても追加工事で費用が膨らみます。内装コストを抑えられるという居抜きのメリットも消えてしまいます。

当社で関わった案件で、カフェを開業したい方が半年で20件以上内見しても決められずにいたことがありました。必要な電気容量と給排水の位置を先に書き出してもらうと候補は3件に絞れ、そこから約1か月で申込まで進みました。

「良い居抜きは早い者勝ち」の誤解

一般的には、良い居抜きは早い者勝ちなので即決すべきと言われます。ところが現場で見ていると、早く決まる人は勢いで決めているわけではありません。見送る基準を先に持っているから、判断が速いのです。基準がないまま即決した結果、開業後に設備の入れ替えで想定外の出費を抱えるケースを繰り返し見てきました。

家賃・保証金の適正水準と交渉術

居抜き物件の家賃と保証金は、それぞれ単体で比べても適正かどうか判断できません。保証金・造作譲渡費用・前家賃・追加工事費を足した「入居総額」で比べ、造作譲渡費用と賃料はセットで交渉します。そうすると適正水準が見えてきます。

保証金と造作を足した総額で判断する

現場での経験則として、店舗の保証金は賃料の6〜10か月分で提示されることが多く、退去時に一定額を差し引く「償却」が付いた契約もよくあります。居抜きの相場を調べる方は多いのですが、造作譲渡費用に定価はありません。設備の残り寿命と、引き継ぎを希望する人の数で決まります。保証金が安くても造作が高ければ、店舗の初期費用を抑えたことにはなりません。

造作譲渡費用は原状回復費の裏返しで交渉する

業界の中でもあまり意識されていない視点があります。前テナントにとって造作譲渡は、設備を売る取引である前に、スケルトンに戻す原状回復費を払わずに済む取引だということです。売り手が本当に比べているのは撤去工事の見積額です。設備の製造年や修繕が必要な箇所を根拠として示すと、交渉は進みやすくなります。

当社取扱案件では、譲渡希望額300万円の焼肉店の居抜きで、業務用エアコンの製造年が古いことと、製氷機がリース品であることを示しました。その結果、譲渡額が100万円以上下がった例もあります。貸主にとっても、空室の間は賃料が入りません。造作の話がまとまりそうだと伝えたうえでフリーレントを相談すると、条件が動くことがあります。

契約書に潜むリスクと確認事項

居抜き物件の契約書は2本あります。貸主と結ぶ賃貸借契約と、前テナントと結ぶ造作譲渡契約です。この2本を照らし合わせ、設備の所有権・原状回復の範囲・故障時の修繕負担を申込前に確定させることが欠かせません。

店舗経営者倶楽部の会員さんからよく聞くのが、造作が安かったので決めたのに、開業した年の夏に空調が壊れ、入れ替えに200万円近くかかったという話です。その空調が造作ではなく貸主所有の残置物扱いになっていて、修繕を誰も負わない契約だった例もあります。居抜きの注意点は、契約書の細かな文言に出てきます。

今すぐできること

  • 譲渡対象の設備リストを受け取り、製造年とリース品かどうかを1点ずつ確認する
  • 原状回復の条項に、退去時のスケルトン返しが含まれていないか確認する
  • 造作譲渡について貸主の承諾が取れているか、書面で確認する

やってはいけないこと

  • 賃貸借契約の審査が通る前に、造作譲渡の手付金を払う
  • 「現状有姿・一切保証なし」の条項を読まずに署名する

条項ごとの確認ポイントは、店舗開業・店舗経営支援のよくある質問100選でも整理しています。

よくある質問

Q1. 居抜き物件で開業すると初期費用はどれくらい抑えられますか?

A. 内装・設備の状態次第で幅があります。店舗物件の賃貸借1000店舗以上の経験上、スケルトンからの新規内装と比べて初期費用を大きく抑えられた事例は多いです。ただし設備の入れ替えや退去時のスケルトン返しまで含めた総額で比べないと、差が縮まることがあります。

Q2. 居抜き物件の内見で後悔しないためのチェックポイントは?

A. 業態に必要な設備容量、前テナントの撤退理由、譲渡設備の製造年とリース品の有無の3点が核心です。撤退理由を曖昧にされる物件は、立地や動線に集客面の構造問題が隠れている場合があります。内見前に確認項目を書き出しておくと、1回の内見で判断しやすくなります。

Q3. 造作譲渡費用の交渉はどうすればよいですか?

A. 設備の経年劣化や修繕が必要な箇所、リース品の有無を根拠に示して交渉するのが有効です。前テナントは造作を譲ることで原状回復費を払わずに済むため、撤去費用と比べた提案が通りやすくなります。根拠を示した交渉で費用が下がった事例は現場で多く見てきました。

まとめ

居抜き物件で回り道せずに開業するには、設備条件から逆算する、内見で撤退理由と設備を確かめる、造作譲渡費用と賃料をセットで交渉する、という順番を守ることが近道です。造作譲渡費用は原状回復費の裏返しとして考え、申し込む前に2本の契約書を照らし合わせてください。見送る基準を先に決めておくと、判断が速くなります。

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