2階が暴力団事務所だった教室はすぐ潰れた――派手さゼロで10年以上生き残るFC本部から店舗オーナーが学ぶ7つの教訓

2階に暴力団事務所が入っていた教室は、開業してすぐに潰れました。

これは噂話ではなく、あるプログラミングスクールFCの本部代表が、自分の目で見てきた実話です。当時はまだ物件選びに慣れていない状態で、気づかないまま契約に至ってしまったそうです。

物件を選ぶという行為は、それだけで店の寿命を決めてしまいます。私は店舗物件だけで1000店舗の賃貸借に関わってきましたが、この話を聞いて改めて思いました。立地は、経営者の努力ではどうにもならない前提条件だということです。オープンしてからどれだけ頑張っても、立地の欠陥は覆せません。

今回は、子供向けプログラミングスクール「iTeen(アイティーン)」のFC本部代表へのインタビュー動画を題材に、店舗オーナーが自分の店に持ち帰れる教訓を整理していきます。iTeenの宣伝をしたいわけではありません。この動画の中に、立地・資金・経営という私の専門領域と重なる部分が多く、店舗オーナー全般に効く話がいくつも詰まっていたので、それを分解していきます。

目次

iTeenは何者か、数字で押さえておく

iTeenは、対面で1対1から1対3程度の個別指導を行う「本格派」のプログラミングスクールです。Scratchから始めてPython、AI、3Dプリンターまでをトータルで扱い、プログラミング検定やPython検定、高校生になればITパスポートや基本情報技術者試験まで見据えたカリキュラムを組んでいます。タイピングコンテストを自社で開催するなど、学びの幅を広げる工夫もしています。

FC展開は10数年前から始まり、現在は全国50店舗まで拡大しています。直営は1店舗のみで、あとはすべて加盟店です。年に2から3店舗ずつ増えてきたとのことですが、代表自身は、無駄があったりブームがあったりと、本部の自力を鍛えるような時期もあったと振り返っており、一様なペースで積み上がってきたわけではないようです。動画内で語られた数字を整理すると、加盟金は250万円(物件取得費は別途)、ロイヤリティは10%です。加盟店の平均生徒数は43名(直営や開業直後の教室も含めた平均とのことです)で、単価は月1万8000円前後、月商にすると100万円弱、高い店舗で200万円程度、利益率は40から60%程度とのことでした。

さらに、動画内で示された保守的なシミュレーションでは、初期費用が加盟金込みで約410万円、2年目の営業利益が約300万円、3年目が約650万円という数字が出ていました。ここは本部側が、よく見積もって後で実際の数字が届かないのが一番嫌だという考え方のもと、あえて保守寄りに作った想定だと明言していた点が目を引きます。なお、1年目の数値は本稿では扱いません。

この数字だけを見ても、飲食のように「明日100万円売上が立つ」ような派手さはありません。むしろ地味です。この地味さの中にこそ、店舗オーナーが学ぶべき論点が詰まっていると私は見ています。ここから先は、店舗物件の賃貸借を数多く見てきた経験と、店舗経営者を支援してきた立場から、動画の事実に自分の見解を重ねて整理していきます。動画で語られた事実と、私の見解は分けて書きますので、その前提で読み進めてください。

教訓1 立地は”命取り”にもなる

冒頭の話に戻ります。2階に暴力団事務所があった教室は、すぐに潰れました。これは特殊な事故ではなく、立地選定の本質を突いた話です。店舗経営がどれだけうまくいくかは、実は開業前の物件選びの段階でかなりの部分が決まってしまいます。

iTeenの本部は、物件探しに人口推移(子供の数が今後も増える、または少なくとも維持される地域かどうか)を最重要指標に置いています。代表は番組内で、北千住を例に、範囲を広めに見れば候補を20から30件ほど挙げられると説明していました。実際に本部が最も苦労した出店例として語られていたのは目黒で、約10ヶ月かけて200箇所以上を見て回ったといいます。

半年から10ヶ月という時間軸は、多くの経営者にとって「そんなに時間をかけられない」と感じる長さかもしれません。私が店舗の賃貸借に数多く立ち会ってきた経験から言えるのは、物件選びにかけた時間は、そのまま開業後の集客の楽さに跳ね返ってくるということです。急いで決めた物件は、大抵どこかに無理があります。人通り、視認性、周辺の入居テナント、そして今回のように上下左右にどんな店子が入っているか。これらは内見1回では見抜けません。感覚で物件を決める経営者は、後から必ず苦労します。立地は営業努力で覆せない前提条件だと肝に銘じておくべきです。

教訓2 「地味で安定」を選べる胆力

この本部代表は、自分たちのビジネスを「地味」だと繰り返し表現していました。飲食のように一発の売上増はなく、貯金箱にコツコツお金を貯めるように毎月積み上がっていくストックビジネスだと。コロナ禍でも、それを理由に生徒数が落ちることはなかったと語っていました。

これは謙遜ではなく、事業モデルの本質を言い当てた言葉です。店舗経営を始めようとする人の多くは、無意識に「派手に儲かる」事業に惹かれます。派手な事業ほど、景気や流行の波に左右されやすく、再現性が低い傾向にあります。私が店舗オーナーの相談に乗っていて感じるのは、成功している経営者ほど「地味な安定」を軸に据え、その上に単発の施策を乗せているということです。逆に、地味さに耐えられず次々と新しい業態やキャンペーンに手を出す経営者ほど、足元の数字が積み上がらないまま消耗していきます。自分の事業モデルが本質的に地味なのか派手なのかを直視できるかどうか、そこに経営の分かれ目があります。地味だからこそ長く続き、長く続くからこそ資産になります。

教訓3 保守的に見積もる姿勢

初期費用410万円、2年目の営業利益300万円、3年目650万円というシミュレーションを、本部側はあえて保守寄りに作っていました。よく見積もって後で実際が届かないことを最も避けたいという考え方です。加盟店に利益を残すことが、綺麗事ではなく強い加盟店を作るための全体戦略だとも語っていました。

これは事業計画全体に通じる話です。開業前の売上計画が楽観的すぎることが原因の失敗を、私は数えきれないほど見てきました。楽観的な数字で融資を引き、楽観的な数字で人員計画を組み、実際の数字が届かなかった瞬間に資金繰りが崩れる。この崩れ方は、驚くほど多くの店で同じ形をたどります。自分の店の事業計画を作るときも、強気の数字を並べる前に「この数字が半分だったらどうなるか」を必ず検証してほしいと思います。保守的な数字で成立する計画は、うまくいったときに余力になります。逆は、うまくいかなかったときに即座に事故になります。数字を盛って見せてくる相手には、その分だけ疑ってかかるくらいがちょうどいいです。

教訓4 儲かる商圏にしか出さない、あえて絞る

本部代表は、店舗数を増やすこと自体は簡単だが、加盟店の平均生徒数と質を上げることの方がはるかに難しいと明言していました。だからこそ、儲かる商圏にしか出さない方針を最初から掲げ、全国でも200から300店舗で頭打ちになると想定しているそうです。

多くのFC本部や多店舗展開を志す経営者は、店舗数の拡大そのものを目標に置きがちです。店舗数と収益性は比例しません。勢いに任せて出店エリアを広げた結果、個々の店舗の収益が薄まり、本部機能だけが肥大化して、気づけば全店が薄利で身動きの取れない状態に陥る。これは拡大を急いだ多店舗経営が繰り返し陥る典型です。出店は「出せる場所」ではなく「勝てる場所」に絞るべきです。頭打ちの水準をあらかじめ自分で決めておくのは、先を見据えた発想です。無限に拡大できると思っている経営者ほど、伸びしろの天井にぶつかったときの対応が下手になります。天井を先に決めておけば、その中でどこまで質を上げられるかに意識を集中できます。

教訓5 最初はオーナーが現場に入る覚悟

本部代表は、最初の半年から1年はオーナー自身が現場に入る方がうまくいくと話していました。教育業は、現場に入る人のリアリティや覚悟が保護者に見抜かれるからです。副業には向いておらず、まず1年1店舗を回して黒字を確認し、5年ほどかけて3店舗まで増やし、そこから人を雇ってマネジメントに専念する流れを推奨していました。

これは教育業に限った話ではありません。どんな業態でも、開業初期にオーナーが現場から離れていると、スタッフの動きにも、接客の温度にも、必ず綻びが出ます。お客様は、経営者が本気でその店に向き合っているかどうかを、驚くほど敏感に感じ取ります。私はよく、店舗経営者に「任せるのは仕組みができてから」と伝えています。仕組みも現場感覚もない状態で人に任せると、任された側も何を守ればいいか分からず、結果として店の質が落ちます。最初の1年を自分の足で回すという覚悟は、遠回りに見えて、実は一番の近道です。

教訓6 多店舗化の前に本部(仕組み)の自力を鍛える

この本部代表は、10数年かけて店舗開発、スーパーバイジング、クレーム対応、直営店の店長業務まで、すべて自分自身でやってきたと話していました。不採算店もあるにはあるが、それぞれに明確な理由があり、一つずつ潰し込んでいった結果として、平均生徒数43名という数字に到達したということです。「本部が強くないと加盟店も強くなれない」という考え方を示していました。

これは1店舗の経営者にもそのまま当てはまります。多店舗化を考える前に、自分自身が現場のあらゆる問題に対応できる「仕組みの自力」を持っているかどうかを問うべきです。採用、教育、クレーム対応、数字管理。これらを人任せにしたまま店舗数だけを増やすと、増やした瞬間にほころびが表面化します。1店舗目で仕組みを作り切れていないまま2店舗目を出し、共倒れになった経営者を、私は何組も知っています。多店舗化は、仕組みを作り終えた後のご褒美であって、仕組み作りの代わりにはならないということです。

教訓7 これからは「頼れる地域の存在」として選ばれる

本部代表は、広告を打てば問い合わせは増えるが、これからは無理な営業をする時代ではなく、「困ったらあそこに相談できる」という頼れる存在として口コミで選ばれていくのが理想だと語っていました。そのために、AIに相談されたときに自社が薦められるような仕組み、いわゆるAIOにも取り組んでいるとのことです。

これは私が普段から店舗オーナーに伝えている話とも重なります。今の消費者は、何かに困ったときに検索するだけでなく、AIに相談するようになってきています。地域の信頼を積み上げてきた店舗が、口コミという資産だけでなく、AIに拾われる情報の作り方まで含めて選ばれる時代に入っています。広告費で問い合わせを買う発想だけでは、これからは長く戦えません。地域に根を張り、頼られる存在になることと、AIに正しく認識される情報を持つこと。この両輪を持てるかどうかが、これからの店舗経営を分けていきます。

立地と再現性で、店を「資産」に変える

今回の動画で語られていたのは、決して華やかな成功譚ではありませんでした。地味な数字、保守的な計画、時間のかかる物件探し、現場に入り続ける覚悟。どれも地味です。この地味さの積み重ねこそが、10数年潰れずに店舗を増やし続けている理由です。

私はこれまで店舗物件の賃貸借に1000店舗関わり、出店基準や立地選定、契約条件の交渉を経営者の立場で見てきました。その経験から言えるのは、派手な集客施策よりも先に、立地という土台と、保守的で誠実な事業計画という骨格を作った店舗の方が、結局は長く生き残るということです。今回の7つの教訓は、業種を問わず、自分の店に持ち帰って考える価値があるものばかりです。立地、資金計画、出店の絞り込み、現場に入る覚悟、仕組み化、そして地域とAIからの信頼。どれか一つだけでは足りず、全部を積み上げて初めて店は資産になっていきます。

自分の店の立地は本当に正しかったのか。事業計画は楽観に寄りすぎていないか。仕組みを作る前に店舗数だけ増やそうとしていないか。こうした問いを、一人で抱え込まずに検証できる場が、店舗経営者にはもっと必要だと感じています。店舗経営者倶楽部では、こうした立地・資金・経営の実務論を、同じ立場の店舗オーナー同士で持ち寄って検証しています。自分の判断を一人だけで確定させる前に、誰かの目を通してみる価値は、思っている以上に大きいものです。

出典:フランチャイズ探偵団「プログラミングスクール『iTeen』とは?どんなフランチャイズ?【脱サラ/独立開業】」(https://youtu.be/oGRXf1NeZpE )

店舗経営の「独学」を、今日で終わりにする。

店舗経営者倶楽部は、会員300名超の実践者が情報と失敗を持ち寄る集合知の場です。入会金198,000円(通常264,000円)・月額0円・審査制・1年後 無条件全額返金。まずは無料のメールで中身を確かめてください。

無料でメールを受け取る  倶楽部の詳細を見る

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次