知名度のあるブランドに参加しながら店舗経営する手法に「フランチャイズ(Franchise=FC)」と「のれん分け」があります。
この二つの手法、類似点もあれば、相違点もあります。
それはどんなことでしょうか。
そこで今回は、店舗オーナーにとっても気になるフランチャイズとのれん分けの類似点と相違点を詳しく解説します。
その上で双方のメリット・デメリットも紹介しましょう。
フランチャイズって何?のれん分けって何?
まずは、フランチャイズとは、のれん分けとはどのような商売の仕方なのかから解説しましょう。
フランチャイズとはこんな商売!
フランチャイズというとプロ野球の本拠地を思い起こす人もいるでしょうが、ビジネスでは全く違う意味になります。
フランチャイズはフランチャイザーといわれる本部がフランチャイジーと呼ばれる加盟店を指導・サポートしながら、店舗運営をさせる商売の手法です。
フランチャイジーはフランチャイザーの商号や商標の使用権利も得られます。
そのため、オーナーが一人営業しているお店よりも、商売活動がしやすくなり、大きく儲けられることもあるのです。
のれん分けとはこんな商売!
のれん分けとは、お店や企業で働き続けた従業員が独立開業する際に、元のお店や企業の屋号や商品を使わせる権利を与えることです。
通常は独立開業した従業員は元のお店や企業の屋号や商品は使えないことが多いのですが、のれん分けにより可能になります。
ちなみに、「のれん」とはお店の入口に掛けられている半カーテンのような布のことです。
のれん分けではお店や企業のためにがんばってくれた従業員が独立することになったときに応援してあげようという気持ちが込められています。
フランチャイズとのれん分けの類似点は?
フランチャイズとのれん分けには類似点がいくつかあります。
以下にピックアップしてみましょう。
類似点①商品やサービスはあらかじめ用意されている
ゼロから店舗をスタートするとなると、商品やサービスもオーナー自身が考えて、用意しないといけません。
一方、フランチャイズやのれん分けでは、あらかじめ用意された商品やサービスを活用できる点は類似しています。
フランチャイズの場合はフランチャイザーが提供する商品やサービスをそのまま利用でき、のれん分けでは元勤めていたお店や企業のものを使えます。
そのため、スタート地点から商売自体はしやすくなるでしょう。
類似点②リスク軽減が図れる
全くのゼロから新規にお店を開業するのは大変です。
カンタンには集客もできないでしょうし、商品やサービスの手配でも苦労することがあるでしょう。
それらの点がうまくできないと、経営失敗に繋がることもあります。
そうです、新規店舗開業にはリスクがあるのです。
フランチャイズやのれん分けの場合、そのようなリスク軽減を図りやすいところが類似しています。
すでに用意されている商品やサービスを使えますし、本部のブランド力も活かせるなど、有利な商売展開もできます。
類似点③経営ノウハウも教えてもらえる
フランチャイズでものれん分けでも、経営ノウハウを教えてもらえる点が類似しています。
経営についての知識が不十分でも、本部や元お店・企業が指導してくれるのはありがたいことです。
これで新たな店舗経営もしやすくなるでしょう。
類似点④バックアップ体制も充実
フランチャイズでものれん分けでも、充実したバックアップを受けられる点が類似しています。
集客や売上サポートや相談などもあります。
そのおかげでたとえ商売が順調に進まないときでも、回復させられることもあるでしょう。
類似点⑤確かなブランド力がある
フランチャイズでものれん分けでも確かなブランド力を活用できる点が類似しています。
フランチャイザーや元のお店・企業のブランドをそのまま利用させてもらえるのです。
これで集客には大きな効果を発揮し、商売繁盛にも繋げやすくなります。
フランチャイズとのれん分けの異なる点は?
フランチャイズとのれん分けの共通点を紹介しましたが、両者は別個の商売形態です。
そのため、異なる点も多くなっています。
いくつかそのような相違点をピックアップしてみましょう。
相違点①|対象者
フランチャイズとのれん分けでは対象者が異なります。
フランチャイズ募集の対象になるのは全くの第三者。
フランチャイザーとは関係もゆかりもない人たちです。
のれん分けの対象になるのは元従業員や親族です。
相違点②|経験
フランチャイズとのれん分けでは、新規開業するオーナーの経験が異なるものです。
フランチャイズに新たに加盟するオーナーの場合、その業種の経験があまりないことがよくあります。
経験者が加盟することもありますが、未経験でもフランチャイザーの手厚いバックアップにより、商売のコツを教えてもらえるのです。
そのため、業種未経験から成功しているフランチャイジーも多いです。
一方、のれん分けで新たに独立開業するオーナーの場合は、すでに元のお店や企業で業界経験をかなり積んでいます。
実務経験も豊富で、その経験を活かしながら店舗運営ができるのです。
相違点③|適した業界・業種
フランチャイズとのれん分けでは、それぞれのオーナーにとって適した業界・業種も異なります。
フランチャイズの場合、未経験者が多く加盟してくることもあり、専門的なスキルがなくても携われる業界・業種が適しています。
具体的には次のような業界・業種です。
- 飲食店業界
- 小売業界
- コンビニエンスストア業界
- フィットネスクラブ業界
- 美容業界
- 教育業界
- クリーニング業界
- ペットケア業界
フランチャイザーが提供するノウハウさえあれば、店舗経営ができる業界・業種です。
のれん分けでは、すでに実務経験を豊富に積んだオーナーによる店舗経営になるので、一定のスキルが求められる業界・業種に向いています。
例えば、次のような業界・業種です。
- 建築業界
- 工芸品製作業界
- 伝統工芸業界
- 整体・マッサージ業界
- 花屋業界
- 製菓・パン製造業界
- 飲食業界(個人経営のレストランやカフェ)
のれん分けではスキルをある程度持っているオーナーが開業するので、高品質なサービス提供もしやすいです。
相違点④|店舗運営の制約
フランチャイズとのれん分けでは、店舗運営に課される制約が異なります。
フランチャイズの場合、フランチャイジーはフランチャイザーの商号や商標も利用できるし、サポートや指導も充実しています。
その分、フランチャイザーの方針から逸脱した店舗経営ができません。
フランチャイジーにある程度の自由度を認めているフランチャイザーもありますが、基本的にはフランチャイザーの店舗経営方針に従わなければいけません。
提供する商品や営業時間などもフランチャイザーの指示どおりにします
そのため、店舗運営における制約も多くなっています。
のれん分けでは、そのような制約はあまりないものです。
元のお店や企業との強い繋がりがあっても、経営に関してあまり口出しをされることはありません。
相違点⑤|事業活動のルール
店舗運営の制約とも関係があることですが、フランチャイズとのれん分けでは事業活動のルールも異なります。
フランチャイズが事業を行う際は、商品の仕入れ先も指定されるでしょうし、他社商品なども扱えません。
のれん分けの場合も、元のお店や企業の商品を仕入れて、販売することも多いですが、ここに制約はありません。
あくまでも独立したオーナーの経営するお店なので、オーナーの考えに基づいて商品やサービスを入れ替えることも可能なのです。
のれんに傷さえ付けなければ、構わないということですね。
相違点⑥|本部の収益源
フランチャイズとのれん分けでは、本部の収益源が異なります。
フランチャイザー(フランチャイズ本部)はフランチャイジーに様々なサポート・指導をしますし、商号や商標を利用できる権利も付与します。
その対価として、フランチャイジーは次のようなお金を納めます。
- 加盟金
- 開業指導費
- 研修費
- ロイヤリティなど
これがフランチャイザーの主な収入源です。
そしてロイヤリティなどは高額になることもあり、フランチャイザーも大きな収益を上げられるような仕組みになっています。
のれん分けでは、元のお店や企業(本部)に上記のような収入源はありません。
独立開業したオーナーと契約を結ばないケースもあり、あくまでも別個の存在です。
商号や商品を使わせてあげてはいますが、フランチャイズ契約のように高額なお金は頂けません。
オーナーが本部から仕入れを行う際に取引手数料のようなものは請求できる場合もありますし、のれん代という代金もありますが、フランチャイズ契約のように高額にはなりにくいです。
そのため、のれん分けによる本部の収入は少ないです。
相違点⑦|開業するまでの期間
フランチャイズとのれん分けでは、オーナーが開業するまでの期間が異なります。
フランチャイズの場合、フランチャイザーの仕事が未経験なこともあり、開業前に指導もあるでしょうし、研修も受けないといけません。
その期間はフランチャイザーによっても異なりますが、大体数週間から数ヶ月程度です。
のれん分けの場合は、そういうわけにはいきません。
まずはお店や企業に就職して、正社員になる必要があります。
最低でも数年間は勤めないといけないでしょう。
その後独立開業する際にのれん分けをしてもらえることがあります。
相違点⑧|本部との関係
フランチャイズとのれん分けは、本部との関係が異なります。
フランチャイザーとフランチャイジーの関係は新規契約によって成り立ちます。
契約書を交わし、その契約書の中で様々な取り決めが行われるのです。
加盟金やロイヤリティ、運営ルールなどの取り決めで、フランチャイザーとフランチャイジーの義務と責任も明確になっています。
のれん分けの場合の場合、基本となるのは信頼関係です。
元のお店や企業に勤めていた従業員が独立開業するとあって、本部も信頼しています。
もちろんのれん分けでも契約書を交わす方がいいのですが、フランチャイズ契約とは違い、見知った者同士なので信頼に基づいた契約を結べます。
フランチャイズ開業とのれん分け開業のメリットは?
フランチャイズ開業とのれん分け開業にはそれぞれどのようなメリットがあるでしょうか。
いくつかメリットを紹介しましょう。
フランチャイズ開業のメリットはこれ!
フランチャイズに加盟したいオーナーとしては、そのメリットに関心があるでしょうから、確認してみましょう。
未経験でもスタート可能
通常は未経験分野の商売を始めると、失敗リスクも高くなります。
フランチャイズの場合は、そうとも言えません。
未経験者にも手厚いサポートとバックアップがあり、丁寧に指導をしてくれますから、経験不足を補うことができます。
未経験の業界・職種でも、フランチャイズに加盟して成功しているオーナーも多いです
集客サポートがアリ
新たにお店を開業して一番苦労するのがどのように集客するかです。
ゼロからのスタートでは、お店も周囲に認知されていないでしょうから、カンタンにはお客さまを集められません。
その点、フランチャイズに加盟すると、フランチャイザーから集客サポートを受けられます。
フランチャイザーが蓄積したマーケティング戦略をそのまま活用できるのです。
具体的には、全国規模の広告キャンペーンを行ってくれたり、プロモーションイベントを企画してくれたり、マーケティングツールを提供してくれたりなどです。
これで集客もはかどりやすくなるでしょう。
魅力あるブランド力を活用できる
フランチャイズ開業のメリットで大きいのがフランチャイザーのブランド力を活用できることです。
オーナー自身が開業したお店にはそのようなブランド力は皆無でしょう。
ゼロから築いていかなければいけません。
フランチャイズなら、フランチャイザーの持てる魅力あるブランド力をそのまま継承できます。
このブランド力で集客の呼び水になるでしょう。
のれん分け開業のメリットはこれ!
続いて、のれん分け開業のメリットを紹介しましょう。
店舗運営ノウハウは勉強済み
のれん分けで開業するオーナーは、元勤めていたお店や企業で様々なことを学んでいるはずです。
その中には、店舗運営のノウハウも含まれるでしょう。
一定の修行期間を通して、スキルも知識も磨いている場合が多いです。
それだけに全くのゼロからの状態から開業するよりも、事業展開もしやすいでしょう。
ロイヤリティがないな
フランチャイズ契約につきもののロイヤリティですが、のれん分けにはありません。
のれん代という代金はあるものの、ロイヤリティほど高額にはなりにくいです。
そのため、次のようなメリットが得られます。
- 支払い負担が減ることで、手元に残る利益が増える
- 残った利益は個人的な目的だけでなく、お店の発展のためにも使える
- ロイヤリティに縛られないので、経営を自由にできる
- マニュアルに拘束されない.
のれん分けで開業する場合は、元のお店や企業から独立する形になるので、本部はあまり干渉しないものです。
マニュアルを用意して、オーナーを拘束するということはありません。
経営の自由度も多く、営業時間も仕入れ先もお客さまへのサービス内容も開業場所などもオーナー自身が決められます。
フランチャイズ開業とのれん分け開業のデメリットは?
フランチャイズ開業とのれん分け開業のメリットを紹介しましたが、デメリットももちろんあります。
いずれの方法で開業できるのか、メリットとデメリットを比較する必要もありそうです。
フランチャイズ開業のデメリットはこれ!
フランチャイズ開業ではフランチャイザーから充実したサポートを受けられる反面、デメリットもいろいろあります。
どんなデメリットか、確認してみましょう。
加盟金やロイヤリティ負担が大きい
フランチャイジーはフランチャイザーの商標も利用できるし、様々なサポートも受けられますが、代わりに加盟金やロイヤリティを支払うことになります。
この加盟金やロイヤリティの負担は重いです。
数十万円から数百万円になることもあり、支払いで苦労することもあるでしょう。
充実のサポートに対する対価であるとはいっても、オーナーにとっては辛いところです。
経営には一定の制限がある
フランチャイザーの店舗経営には一定の制限があります。
すでに説明したことではありますが、オーナーの勝手に経営はできません。
フランチャイザーの経営方針や指示に従わなければいけないのです。
お店の看板、取り扱う商品やサービス、仕入れ先、使用する器具や設備・システムなども指定されることが多いです。
のれん分け開業のデメリットはこれ!
次は、のれん分け開業のデメリットです。
修行が必要である
のれん分け開業を行う場合は、ある程度お店や企業で修行をしなければいけません。
全くの未経験でのれん分け開業はさせてもらえないのです。
お店や企業に一定期間勤める⇨商売のコツと手法を学ぶ⇨独立開業時に本部から称号や商品利用を認めてもらう。
これがのれん分け開業のプロセスです。
元のお店や企業から認められるためにも、本部での修業経験が必要なのです。
本部と競合関係になるかも
のれん分け開業をする場所によっては、本部との競合関係が発生してしまうかもしれません。
本部の支店やお店があるのと同じ地域、近隣に開業してしまう場合などです。
競合関係になると、集客が思うように進みにくくなることもあるでしょうし、商品やサービスの売れ行きが伸び悩むこともあるでしょう。
契約関係が不明瞭になるキライがある
のれん分け開業は本部と独立開業したオーナーの信頼関係に基づいて行われます。
ある意味師弟関係のようになっているのです。
これは素晴らしいことなのですが、ややもすると契約関係が不明瞭になるキライもあります。
そうなると、本来は信頼し合っていた者同士でも、後で何らかのトラブルが起きたときに対処が難しくなるかもしれません。
それだけに、のれん分け開業でも詳細な契約書をしっかり作成した上で契約することが望ましいです。
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