物件を契約してから「こんなはずじゃなかった」と気づいても、退去コストと違約金が重なるだけです。内見は「気に入るか」ではなく「経営が成り立つか」を判定する場です。このページでは、1,000店舗以上の店舗物件賃貸借業務に携わってきた店舗情報サービス株式会社の代表・繁友健志が実務で使うチェック項目を、業態横断で整理しました。
飲食店・美容サロン・整体院・ジム・小売店など、リアル店舗を出店しようとしている方はそのまま使ってください。
内見チェックリスト:9つの確認ポイント
1. 立地・動線
- 最寄り駅・バス停からの徒歩ルートを実際に歩いたか(地図上の距離と体感が異なることがある)
- ターゲット客層が日常的に通るルート上にあるか
- 車来店を想定する場合、近隣に駐車場があるか・料金水準は業態と合っているか
- 歩行者の動線が物件の正面を通るか、裏抜けになっていないか
- 搬入・搬出口の位置と幅(食材・機材・廃棄物の動線を業態ごとに想定する)
よくある失敗:内見を平日昼間だけで済ませ、夜間や週末の人通りを確認しないまま契約。開業後に「想定の半分しか通らない」と発覚するケースは業態を問わず多い。
倶楽部で相談できること:出店したい立地のエリア特性や動線の見方について、同業態で先に出店した会員から直接ヒアリングできる場があります。
2. 視認性
- 通りからファサード(正面)が見える距離・角度を確認したか
- 看板を設置できる面・高さ・面積は賃貸借条件で制限されていないか
- 向かいのビルや電柱・樹木で視認性が遮られていないか
- 夜間に照明が届いているか(周囲の街灯・自店の照明計画との整合)
よくある失敗:外観写真では広く見えた間口が、実際に立つと隣のテナントや柱で半分以上隠れていた。看板面積も「屋上は不可・壁面は1枚のみ」という制限を見落として設計を組み直すことになった。
3. 前面間口と奥行き
- 間口(通りに面した幅)をメジャーで実測したか(図面と異なることがある)
- 奥行きが業態の動線・席数・作業スペースと合っているか
- 柱・梁・段差の位置を確認し、レイアウト図に落とし込んだか
- 天井高は業態の演出・設備導入に支障がないか(ダクト工事の余地があるか)
よくある失敗:「坪数は十分」と思って契約したが、柱が2本あり実際に使える奥行きが短く、想定の席数が組めなかった。間口が狭くカウンターとキッチンを両立できなかった。
4. 電気容量・ガス・給排水
- 電気の契約容量(アンペア・kVA)と、自業態で必要な動力・照明・空調の合計を照合したか
- 三相200Vが必要な設備(業務用厨房・エアコン等)に対応できるか
- ガス種(都市ガス・プロパン)と供給圧力は業態の機器スペックに合っているか
- 排水管の位置・口径・グリーストラップの有無と容量(飲食は必須確認)
- 給水の水圧・口径(シャンプー台・厨房・医療機器など多量使用業態は特に)
- 増設工事が許可される条件と費用負担者を確認したか
よくある失敗:「前テナントが飲食だったから設備は整っている」と思い込み、実際には電気容量が不足していた。増設工事費が100万円超となり開業費が大幅に膨らんだケースは珍しくない。ガスをプロパンから都市ガスに切り替える工事が不可だった、という例もある。費用負担は業態・物件・交渉によって異なるため、断定的な相場は出せないが、早期確認が損失回避につながる。
倶楽部で相談できること:設備確認の手順や工事業者との交渉経験を持つ会員(飲食・サロン・ジム等)に直接質問できます。
5. 坪数と席数・定員
- 壁芯面積(契約書記載)と内法面積(実際に使える面積)の差を把握しているか
- 業態ごとの法定基準(消防法・建築基準法・食品衛生法等)に基づく定員・面積要件を確認したか
- 収益計算上必要な席数・ベッド数・マシン台数が物理的に置けるか、実寸で確認したか
- 収益計画と賃料のバランスを、業態・物件・相場の条件を踏まえて試算したか(家賃比率の断定的な正解はなく、業態・立地・客単価によって大きく異なる)
よくある失敗:図面の坪数だけで計算し、柱・トイレ・バックヤードを除いた実効面積が想定の7割だったため席数が組めず、収益計画ごと見直しになった。
6. 原状回復の範囲
- 「スケルトン渡し・スケルトン返し」か「居抜き渡し・現状返し」か、契約書で明確になっているか
- 退去時に原状回復する範囲(壁・床・天井・設備・看板基礎等)を書面で確認したか
- 工事施工者を「オーナー指定業者のみ」とする条件がついていないか(指定業者は相場より高額になることがある)
- 原状回復費の概算を内見段階で試算し、撤退コストとして収益計画に織り込んでいるか
よくある失敗:「造作を残してもいい」と口頭で言われたまま退去を迎え、書面がないために全撤去費用を請求された。スケルトン返し条件に気づかず、内装投資額とほぼ同額の退去費が発生した。
倶楽部で相談できること:原状回復条件の交渉事例・書面チェックのポイントについて、実際に交渉した経験を持つ会員に聞ける場があります。
7. 設備の帰属
- 空調・給湯器・厨房設備・照明などが「オーナー所有」か「前テナント残置物」か「造作譲渡対象」かを確認したか
- オーナー所有設備の修繕義務者(貸主・借主どちらか)を契約書で確認したか
- 造作譲渡の場合、譲渡額の根拠と設備の現況・残存耐用年数を確認したか
- 「無償譲渡」でも、古い設備の修繕・交換費用は借主負担となることが多い点を認識しているか
よくある失敗:「エアコン付き」の物件を選んだが、設備がオーナー所有でなく前テナントの残置物で、故障時の修繕費が全額借主負担だった。入居直後に業務用エアコンが故障し、予算外の出費が発生した。
8. 周辺競合
- 徒歩圏・車圏で同業態の競合店舗数・規模・客層を現地で確認したか
- 競合の価格帯・メニュー・サービス内容を把握し、自店の差別化ポイントを言語化できているか
- 競合が多い=需要がある、と楽観的に解釈していないか(供給過多の検証も必要)
- 近隣への新規出店・撤退情報(ロードサイド・SC・ビル内)を把握しているか
よくある失敗:「競合が多いエリア=集客できている証拠」と判断して出店したが、すでに飽和状態で客の取り合いになり、想定集客の半分も届かなかった。
9. 夜間・休日の様子
- 営業時間帯(夕方・夜・週末)に現地を訪れ、通行量・客層・周辺の雰囲気を確認したか
- 夜間の照明状況・治安感・騒音源(飲食街・線路・工場等)を把握しているか
- 駐車場の混雑・近隣飲食店の客引き等、昼間と異なるリスクを確認したか
- 近隣に夜間営業の業態があり、騒音・臭い・ゴミ等の問題が出ないか確認したか
よくある失敗:昼間の内見では静かな住宅街だったが、夜間は近隣の居酒屋の音漏れと酔客の声が響き、ヘッドスパ・リラクゼーションの雰囲気が台無しになった。
内見前・交渉時に使える補足確認事項
- 前テナントの業種・退去理由(建物管理会社に確認できる範囲で)
- 建物の築年数・耐震基準(1981年6月以降の新耐震基準かどうか)
- 用途地域・用途変更の要否(例:住居系地域での飲食店営業制限)
- 保証金・敷金の償却条件と返還時期
- フリーレント・賃料減額交渉の余地(物件・オーナー・市況によって異なる)
内見・出店判断でよく直面する課題
店舗経営者倶楽部には、出店前・内見中・契約直前の経営者から多様な課題が寄せられます。代表的な傾向を以下に整理します。
- 内見時に電気容量を確認しようとしたが、管理会社・貸主側が正確な数値を把握していないケースがあり、どこに確認すればよいか分からないという課題
- 居抜き物件の造作譲渡額が適正水準かどうか、判断する基準を持っていないという課題
- 原状回復の範囲が曖昧なまま契約を急かされており、どのように交渉・確認すればよいか分からないという課題
- 複数の候補物件で迷っており、業態との相性をどう評価すればよいかの判断軸が定まらないという課題
- 初めての出店で確認事項の優先順位が分からず、何から手をつければよいか整理できていないという課題
こうした判断は、一般的な解説記事だけでは答えが出にくく、実際に同じ局面を経験した経営者の声が非常に参考になることが多いです。
専門用語の簡単な解説
- スケルトン渡し / スケルトン返し
- 内装・設備をすべて撤去した「骨組みだけ」の状態で引き渡す・返却する条件。退去コストが大きくなる。
- 居抜き
- 前テナントの内装・設備がそのまま残った状態の物件。初期費用を抑えやすいが、設備の帰属・状態の確認が重要。
- 造作譲渡
- 前テナントが設置した内装・設備を次のテナントへ有償・無償で譲り渡すこと。金額と設備の現況確認が必須。
- 壁芯面積 / 内法面積
- 壁の中心線で計測した面積が壁芯面積(契約書記載が多い)、壁の内側で計測した実際に使える面積が内法面積。差が生じるため注意。
- グリーストラップ
- 飲食店の排水に含まれる油脂・食材くずを分離・収集する設備。食品衛生法上の義務対象となる業態がある。
- フリーレント
- 入居から一定期間、賃料を無償とする条件。工事期間中の賃料負担を軽減するために交渉できることがある。
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- 保証金・敷金とは(店舗)|相場の考え方と返還の仕組み
- 店舗経営者倶楽部とは|出店・FC・物件を学ぶ実務コミュニティ
店舗経営者倶楽部について
店舗経営者倶楽部は、飲食店・美容サロン・整体院・ジム・小売店などリアル店舗経営者が、出店・店舗物件・FC加盟判断・集客・採用・多店舗展開を実務レベルで学べる審査制コミュニティです。運営代表の繁友健志は、店舗物件の賃貸借業務を1,000店舗以上担当してきた実績を持ちます。
倶楽部の会員数は300名超(2026年6月時点)。YouTubeチャンネル「店舗オーナーの為の店舗不動産屋チャンネル」でも出店・物件に関する実務情報を発信しています。
入会金198,000円(通常264,000円)・月額0円・審査制。入会から1年後に、無条件・全額返金(ご希望の方はお申し出により返金)の制度があります。
詳細は店舗経営者倶楽部とはのページ、入会の流れはよくある質問をご確認ください。
店舗物件を探している方へ
店舗経営・出店・店舗物件・FC加盟判断に不安がある方は、店舗経営者倶楽部の活用も選択肢の一つです。同じ局面を経験した会員と直接つながれる環境が、机上の情報収集より早く・正確に判断材料を揃えることに役立ちます。
店舗物件の探し方や倶楽部が向いている人・向いていない人も合わせてご確認ください。
