フランチャイズに加盟したら、本部から充実のサポートを受けながら商売を成功させようと思うものです。
フランチャイズ店オーナーなら誰しもそう考えるでしょう。
ところが、そんなフランチャイズ店を本部が潰してしまおうとすることがあるとかないとか言います。
本当でしょうか。どうしてそんなことをするのでしょうか。
今回は、このフランチャイズ潰しの実態に迫ってみます。
フランチャイズ潰しと関係がありそうな<ドミナント戦略>について
本部によるフランチャイズ潰しを語る上でポイントになる用語があります。
それは<ドミナント戦略>です。
どういう戦略か詳しく解説しましょう。
特定の地域に集中して出店すること
<ドミナント戦略>とは、特定の地域に集中して出店し、その地域でのシェア拡大を図って、独占性や優位性を保とうとする戦略です。
「ドミナント」は英語の”dominant”からきた言葉で、意味は「支配的な」「優勢な」ということですが、その意味の通り地域での支配性を高めるのが<ドミナント戦略>の目的です。
<ドミナント戦略>のメリットは何?
<ドミナント戦略>により地域の支配性が高まると、競合他社が進出しにくくなり、その地域での売上が同チェーン店舗に集中しやすくなります。
これで大きく儲けを上げようというのですね。
同地域に同チェーン店が複数出店することで、同ブランドの知名度も大きく高まります。
知名度が高まるだけでなく、地域住民から愛されるようにもなります。
地域住民に向けた商品やサービス展開もしやすくなるでしょう。
さらに、物流の効率化も図れ、販促活動もまとめてできるので、コスト削減にも繋がりやすいです。
<ドミナント戦略>のデメリットは何?
<ドミナント戦略>のメリットを紹介しましたが、どちらかというとデメリットが目立ち、ややリスキーな戦略になります。
その理由を挙げてみましょう。
まず、特定の地域に集中して出店するということは、同じチェーン店/フランチャイズ店がまとまって存在するということです。
そうなれば、そのお店同士でお客さまの奪い合いになります。
1店舗だけしかなければ、集客も図りやすいですが、複数店舗の存在で競争関係にもなるでしょう。
その結果、最悪の場合、同じチェーン店/フランチャイズ店同士の潰し合いの様相になることもあります。
これが<ドミナント戦略>がフランチャイズ潰しと言われるゆえんでしょう。
次に、地域需要の変化に対応するのが大変なはず。
ニーズやトレンドの変化・環境の変化・ターゲットの変化にうまく対応できないと、集中して展開した店舗が総倒れなんて事態もあるかもしれません。
そうなれば、出店した側の本部にとっても大打撃です。
災害が集中しやすいのも困る店です。
特定の地域に集中出店する<ドミナント戦略>では、その地域に地震・水害などが起きたときに、全て被害を被ってしまいます。
被害が集中してしまうということであり、そこから回復するのも大変です。
本部が<ドミナント戦略>を行う地域選びを間違うと、集客もはかどらず、商売も繁盛しません。
そのようなやり方の元出店したフランチャイズ店などは、潰れてしまう可能性があります。
他の店舗の不祥事の影響をもろに被ることもあります。
同地域に出店している以上、他の店舗が問題を起こしたなどの話が広まったとき、店舗運営も非常にしにくくなるでしょう。
本部によるフランチャイズ潰しはあり得るのか?
<ドミナント戦略>について紹介しましたが、この戦略で本当にフランチャイズ潰しになるのでしょうか。
本部が意図的にフランチャイズ店を潰そうとすることはないかもしれませんが、結果的に潰しと言える側面はあるようです。
同じ地域に集中出店されれば、フランチャイズ店の運営もしにくくなり、集客も図りにくくなり、最終的に店をたたまざるを得なくなることもあるからです。
ただ、本部はフランチャイズ店に成功してほしいとは願っている
本部が意図的にフランチャイズ潰しを行うことはないでしょう。
本部はフランチャイズ店が成功することで、ロイヤリティという収入が入ってくるので、経営がうまくいって欲しいと常日頃から思っているのです。
フランチャイズ潰しなど念頭にはないでしょう。
昔はあったともいう
最近は、本部がフランチャイズ潰しを行うという話はなくなりつつあります。
しかし、以前はあったともいいます。
例えば、こんなケースです。
あるフランチャイズ店が商売で成功し、大きな収益を上げていました。
そこは、市場的に売れ行きが伸びやすい地域だったのですが、そこに狙いを付けた本部が直営店を出店させました。
大規模な直営店です。
その結果、フランチャイズ店の方は潰れてしまったそうです。
本部として直営店の方が可愛いのか、大事にしたのかもしれませんが、これはフランチャイズ潰しの典型的な例でしょう。
店舗数を増やしたいのが本部の本音
本部は少しでも店舗数を拡大して、儲けを多くしたいと考えています。
そのために、<ドミナント戦略>のような手法も使い、各地域に集中出店するのです。
店舗数が多くなればなるほど、本部も儲かって嬉しいのです。
その際に、もし不採算店舗があれば、潰しても構わないと考えている節があります。
優良な店舗だけ残ってくれれば、当方としては全く問題ないということなのでしょう。
意図的な行動には出ないにしても、何らかの圧力を加えて、早く撤退してくれよということもあるでしょう。
セブンイレブンの事例がある
かなり前の話になりますが、セブンイレブンによるフランチャイズ潰しと思われる事例がありましたので、紹介したいと思います。
2014年のことですが、東京都北区にあるJR田端駅の近くに2つのセブンイレブンができたのです。
両方の店舗はわずか20m程の距離にあり、歩いてわずか10秒ほどしかありません。
「セブンの隣にセブンができた」と地元でも話題になりました。
こんなに近くに同じフランチャイズ店が同居する例はまれです。
実は、両店舗のオーナーは同じ方です。
この出店状況についてセブンイレブン側もオーナー側も固く口を閉ざしていますが、地域の事情通の話がありました。
それによると、ライバルのコンビニチェーンが同地域に出店を計画し、その点を恐れたセブンイレブンは先ほどのオーナーに2店舗目の開業を打診したそうです。
もし断れば、ほかのオーナーを探すとプレッシャーも掛けられたらしいです。
両方の店舗を比べると、新規開業した方が土地も広く、駐車場もありました。
そうなると、旧店舗の方が集客で負けてしまう可能性があります。
そんな状況が続けば、旧店舗の存続も危ぶまれるでしょう。
結果的に、潰れてしまうかもしれません。
セブンイレブンはそれを承知で新規店舗の開業を迫ったのでしょうか。
そうなると、これもフランチャイズ店潰しの1形態と言えるかもしれません。
※参照元:セブンの隣にセブンができるワケ:日経ビジネス電子版
<ドミナント戦略>を採用する企業もあるが⋯
リスキーな戦略である<ドミナント戦略>を採用する企業はあります。
うまくいけば、大きな収益を上げられるからでしょう。
しかし、<ドミナント戦略>にはフランチャイズ潰しという面もあります。
これはフランチャイズ加盟店にとってはゆゆしき問題です。
そのため、フランチャイズ契約を結ぶときは、本部側がどのような経営方針を採用しているのか確かめておかないといけません。
これは、「テリトリー権」の問題でもあり、特定の地域でフランチャイズ加盟店が独占的・排他的な営業権利を得られるのか、それとも同チェーンの他のお店の出店があり得るのかという2つの道があります。
この点を確かめないでフランチャイズ契約をしてしまうと、後で潰れるという事態も招きやすくなるので、十分注意しましょう。