フランチャイズ(FC)に加盟するときにフランチャイザーに支払うのが加盟金です。
ロイヤリティと加盟金を納めることで、フランチャイジーはフランチャイザーから様々なサポートを受けられるようになります。
この加盟金、繰延資産として扱われます。
ただ、繰延資産って何と思われた方もいるでしょう。
そこで今回は、繰延資産の意味とFC加盟金と繰延資産の関係にフォーカスを当てて説明をしていきます。
繰延資産とは?
まずは、繰延資産とは?ということで、その意味を解説します。
繰延資産はお店や企業が支払った費用のうち、支払分のサービスやベネフィットが1年以上継続するもので、資産として計上するものです。
つまり、支払い済みのお金、ないしは支払いが決まったお金に対してしばらくの間収益を生み続ける可能性があるものということですね。
支払うお金ですから、資産というのはおかしいのではと思われるかもしれませんが、将来にわたってベネフィットをもたらすことから繰延資産と呼ばれています。
フランチャイズ(FC)加盟金は繰延資産
繰延資産として適用されるのは創立費や開業費、開発費、株式交付費、社債発行費など。
FC加盟金も該当します。
繰延資産の特徴はこう
繰延資産にはいくつか特有の特徴があるので、紹介しましょう。
本来費用と呼ばれるものは発生したときに全額計上するものなのですが、繰延資産は別扱いで、一定期間に分けて費用化=償却していきます。
次に、繰延資産は資産と言っても、流動資産や固定資産とは別物で、実態はありません。
実態ナシ資産☞換金性ナシ資産ということになります。
土地や建物などの資産とは違いますから、売却して現金化することはできませんね。
繰延資産には会計と税務の2種類あります。
それぞれ適用税率と適用範囲が異なります。
もう一点、繰延資産は減価償却を行った上で経費計上するようになるのです。
減価償却とは、繰延資産をベネフィットが継続する期間で割ってから経費計上することです。
割る期間(=分割する期間)は対象のものの耐用年数によって決められています。
フランチャイズ(FC)加盟金の繰延資産とはこういうもの
「FC加盟金の繰延資産」とはどういうことでしょうか。
詳しい内容を紹介しましょう。
FC加盟金が繰延資産と見なされる理由はこう!
フランチャイズ加盟金が繰延資産として扱われる理由はこうです。
FC加盟希望者がフランチャイザーに加盟金を納めると、その対価としてノウハウを伝授されたり、ブランドの利用権などを付与されたりします。
その期間は1年だけということはあり得ないので、当面続くことになるでしょう。
そうなると、加盟金払いによって得られるベネフィットは長期に及びます。
結果として、繰延資産扱いになるのです。
5年間で償却する
FC加盟金を繰延資産として扱う場合の償却期間は5年間です。
5年掛けて費用として計上します。
全額を一括で損金処理したと思う方もいるかもしれませんが、それはできないことになっています(金額にもよる)。
ただし、FC契約期間が5年未満の時は、その契約期間に応じた償却期間になりますね。
契約期間が3年なら、償却期間も3年ということになるでしょう。
金額により仕訳の仕方が異なる
繰延資産として扱われるFC加盟金ですが、金額によって仕訳の仕方が異なります。
その金額の分かれ目は20万円。
20万円以上か未満で仕訳の仕方が変わってくるので、確認してみましょう。
FC加盟金が20万円以上なら
FC加盟金としてフランチャイザーに20万円以上納めた場合、勘定科目は<長期前払費用>となり、基本的に5年間で減価償却をします。
具体的な例を挙げると、分かりやすいでしょう。
FC店開業にあたり、加盟金としてフランチャイザーに銀行振込で100万円納めたとします。
仕訳例は以下のとおりです。
- 長期前払費用:1,000,000/普通預金:1,000,000
- 減価償却費:200,000/長期前払費用:200,000
FC加盟金が20万円未満なら
FC加盟金が20万円未満の場合、繰延資産としては少額であり、全額損金算入することができます。
この場合は、<支払手数料>での仕訳になり、減価償却を行わなくてもいいのです。
やはり仕訳例を取り上げてみましょう。
FC加盟金としてフランチャイザーに銀行振込で15万円納めたとします。
- 支払手数料:150,000/普通預金:150,000
消費税の扱いはこの通り
FC加盟金を納める場合、消費税の対象になることを知っておかないといけません。
理由は役務の提供となるからです。
フランチャイザーからノウハウやブランドの活用、サポートの提供などの対価を得るということですね。
ここで注意して頂きたいのが消費税には繰延資産という考え方が無いことです。
繰延資産なら、何年かに分けて消費税を納められそうですが、そのようなルールにはなっていません。
FC加盟金に対する消費税はフランチャイザーに納めた事業年度に一括して納税しないといけないのです。
FC加盟金以外の項目は?
FC加盟金は繰延資産に該当するのですが、それ以外の開業費用はどうなっているでしょうか。
この点については<法人税法施行令第14条第1項第6号ハ>に説明があります。
その説明によると、「役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用」は繰延資産に該当するそうです。
ということは、研修費用なども含まれますね。
フランチャイズ(FC)加盟金の注意点もチェックしておこう
ここまで、FC加盟金を繰延資産として扱うことを説明してきましたが、最後にこの加盟金に関する注意点もチェックしておきましょう。
FC加盟金は基本的に返還されない
FC加盟金、基本的にはフランチャイザーからオーナーへは返還されません。
例外的に返還されるという規定を設けているフランチャイザーもあるようですが、その場合はむしろ保証金のような扱いになっているのが普通です。
ただ、返還される例がないわけではありません。
オーナーは加盟金の納金によってフランチャイザーから経営ノウハウやブランド使用、サポートななどを受けられることになっている(だからこそ繰延資産と呼ばれる)のですが、これらが不十分であると立証されると、裁判で加盟金の返却命令が下されたことがあります。
ないしは、フランチャイザー側でフランチャイジーの力量を見て、自社のビジネスに適していないなと判断した場合、加盟金を返還することもあるようです。
契約内容をよく確認すること
FC加盟金だけの問題ではありませんが、契約書の内容はしっかりと確認しましょう。
加盟金に関する条項では、金額と共に契約後にフランチャイザー側の都合で開業できなくなったときに加盟金が返還されるのかも確認しておきたいところ。
オーナー側の事情でFC店をたたむときは加盟金が返還されなくても仕方ありませんが、フランチャイザー側の都合なら返還してほしいですよね。
この点を、契約書や契約説明で確かめておきましょう。
加盟金は安ければいいというわけではない
加盟金が安いFCには魅力があるので、加盟したくもなるでしょう。
しかし、ちょっと待ってください。
加盟金が安いというだけで飛びつくのは心配です。
加盟金が安い分、ロイヤリティの方が高くなっていたり、導入すべき設備費用が割高であったりする場合もあります。
もちろん加盟金が安いうえに、他の点でも有利な契約ができるFCチェーンもあるかもしれませんが、総合的な視点に立って判断する必要がありそうです。