人手不足で潰れる店舗経営の罠|採用頼みの失敗

人手不足で潰れる店舗経営の罠|採用頼みの失敗

求人を出しても応募が来ない、採用してもすぐ辞めてしまう。そんな人手不足に悩んでいませんか。実はスタッフが集まらない原因は、開業後の採用活動ではなく、店舗物件を契約した時点でほぼ決まっていたというケースが少なくありません。この記事を読むと、人手不足を招く物件選びの落とし穴と、採用だけに頼らない店舗経営の考え方がわかります。店舗賃貸借業務(店舗物件のみ・居住用は含まない)を1,000店舗以上手がけてきた宅地建物取引士・繁友健志が、10年超の店舗経営支援の現場から解説します。

目次

この記事のポイント

  • 客目線だけで店舗物件を選ぶと、開業後に採用で苦しむ構造ができあがる
  • 家賃の安さを優先して通勤しにくい立地を選ぶと、求人費が家賃の差額を上回るケースがある
  • バックヤードを削った物件で開業すると、採用できてもスタッフが定着しにくくなる
  • FC加盟で本部の売上モデルだけを見ると、必要人員を確保できず後悔につながる
  • 契約前に働き手の目線で内見すると、開業後の採用費と離職リスクを抑えられる

現場で見えてきた実態

店舗の人手不足は、求人媒体や給与条件の巧拙より前に、店舗物件の選び方で大きく方向が決まっている。これが賃貸借の現場で繰り返し見てきた実態です。一般的には「人手不足は採用力の問題」と言われますが、店舗賃貸借業務(店舗物件のみ・居住用は含まない)を1,000店舗以上見てきた経験から言うと、応募が集まらない店舗には契約前からの共通点があります。お客様の来やすさだけを基準に物件を決め、働く人の通いやすさを一度も検討していないのです。

客目線だけの店舗物件選びが招くトラブル

商圏調査は客数を測るものだと思われがちですが、その商圏は同時に「働き手を集める市場」でもあります。現場で実際に見たケースでは、郊外ロードサイドで駐車場を客用にしか確保しなかった店舗が、車通勤前提のエリアにもかかわらずスタッフの駐車スペースがなく、内定辞退が続いた例がありました。物件のスペック上は何の問題もないため、契約時には店舗物件のトラブルとして表面化しにくい。これがこの失敗の怖いところです。

家賃を抑えた分が採用費で消える失敗事例

家賃交渉の失敗というと減額できなかった話を想像しますが、逆のパターンもあります。ある飲食店オーナーは、月額を10万円抑えるために駅徒歩15分の物件を選びました。ところが開業後、求人を出しても応募がほとんど集まらず、採用媒体費と紹介手数料が家賃の差額を上回る状態が続いた、という例も実際にあります。開業の失敗事例として語られるのは資金や集客が中心ですが、立地起因の採用難は後から取り返しがつきにくい分、根が深いと感じています。

具体的な対策と行動ステップ

対策の軸は二つ、契約前の内見に「働き手の目線」のチェック項目を組み込むこと、そして採用がうまくいかない前提でも回る人員設計にしておくことです。テナント契約の注意点というと原状回復や解約条項に目が行きがちですが、賃貸借の現場では、採用に直結する次の条件こそ契約前に確認してほしいと伝えています。

確認項目 見るポイント
通勤動線 駅からの距離、終電時刻、スタッフ用の駐輪・駐車スペースの有無
休憩環境 バックヤードの広さ、着替えや休憩ができる場所を確保できるか
営業時間の拘束 商業施設の場合、契約や館規則でシフトの自由が縛られないか
労働人口 客だけでなく、学生や主婦(夫)層など働き手が通える街かどうか

300名超の店舗経営者倶楽部の会員から実際に聞いた話では、造作工事でバックヤードを削って客席を増やした結果、休憩場所がなくなり、採用してもスタッフが数か月で辞めていく状態に陥った例がありました。後から一部を改装して休憩スペースを設けたところ離職が落ち着いたそうですが、最初の設計段階で決めていれば不要だった出費です。

フランチャイズの失敗にも同じ構造があります。FC加盟の後悔としてよく聞くのは、本部の売上モデルを信じて契約したものの、そのモデルを回すのに必要な人員数と出店エリアの採用難易度を、誰も検証していなかったというものです。加盟前にシフト表を仮組みし、必要人員から逆算する。この一手間だけで判断の精度は大きく変わります。物件契約から採用まで、店舗経営の実務上の疑問は店舗開業・店舗経営支援のよくある質問100選にも整理していますので、契約前の確認に役立ててください。

店舗経営者が今すぐできること

人手不足への対応は、求人費を増やす前に物件と設計を見直すことから始まります。10年超の店舗経営支援の現場で効果を感じてきた、今日から着手できる行動をまとめます。

今すぐできること

  • スタッフと同じ手段・時間帯で実際に店舗まで通ってみて、所要時間と負担を体感する
  • 既存スタッフに「辞めたくなった瞬間」を聞き、待遇の問題と物件・設備起因の問題を分けて把握する
  • 理想のシフト表を先に作り、必要人員数から採用計画と営業時間を逆算する
  • 商業施設内の店舗は、営業時間の拘束条件を管理会社に書面で確認する

やってはいけないこと

  • 応募が減った原因を検証せず、求人媒体への出稿額だけを増やす
  • 1号店の店長候補が育つ前に、2店舗目のテナント契約を進める
  • 「採用は開業後に考える」と物件契約を先行させる

現場で実際に見たケースでは、2店舗目の契約を急いだ結果、1号店から店長を引き抜かざるを得なくなり、両店とも人員が崩れた例もありました。出店計画は物件の計画であると同時に、人の計画でもあります。

よくある質問

Q. 人手不足で失敗する店舗経営者の共通点は?

A. 採用を開業後の課題と考え、物件契約の段階で働き手の目線を検討していないことです。店舗賃貸借業務(店舗物件のみ・居住用は含まない)を1,000店舗以上見てきた経験から言うと、通勤動線や休憩環境を確認せず契約した店舗では、求人費をかけても定着しない状態が繰り返し起きています。

Q. フランチャイズで人手不足に陥らないための加盟前のポイントは?

A. 本部の売上モデルだけでなく、それを回すのに必要な人員数と出店エリアの採用難易度を自分で確かめることです。一般的な目安として家賃が月商の10〜12%以内に収まるかの独自試算と合わせ、人件費・採用費まで含めた収支で加盟を判断してください。

Q. テナント契約前に採用の観点で確認すべき事項は?

A. 営業時間の拘束条件・バックヤードの広さ・スタッフの通勤手段の3点です。特に商業施設では営業時間や休館日が契約で決まっている場合があり、シフト設計を直接左右します。口頭の確認では不十分なので、契約書原文と館規則で明記を確かめてください。

まとめ

人手不足は採用テクニックの問題である前に、店舗物件の選び方と契約条件の問題です。働き手の目線での内見と、必要人員からの逆算を契約前に済ませておけば、開業後に採用費で消耗する展開の多くは避けられます。「客が来る場所」と「人が働ける場所」の両方を満たす物件かどうか、契約書に判を押す前に立ち止まって確かめてください。

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