フランチャイズに加盟する店舗が支払うことになるのがロイヤリティです。
フランチャイズ加盟店(「フランチャイジー」という)がフランチャイズ本部(「フランチャイザー」という)に支払う利用料のようなものです。
このロイヤリティはフランチャイジーの儲けから差し引かれる金額で、収益とも直接関係してくる大切な要素です。
それだけにどのくらいの額になっているか確認の必要があるので、今回はフランチャイズのロイヤリティの相場を紹介しましょう。
フランチャイズのロイヤリティって何?
まずは、フランチャイズのロイヤリティとはどのような料金なのかを解説しましょう。
サポートを受けることに対する対価料
フランチャイズに加盟すると、フランチャイジーはフランチャイザーから次のようなサポートを受けられます。
- 開店準備サポート
- 店舗の宣伝販売戦略サポート
- 資金調達サポート
- 運営サポート
- 情報提供サポート
- 店舗運営システムの提供サポート
- 店舗拡大サポート
- マーケティングサポートなど
その他、ブランド名や商標使用権利なども受け取れます。
フランチャイザーによってもサポート内容は異なりますが、さまざまな充実したサポートがあるのが普通です。
その充実したサポートに対する対価料に位置づけられるのがフランチャイジーがフランチャイザーに支払うロイヤリティです。
フランチャイズロイヤリティの大切さ
フランチャイズのロイヤリティはフランチャイザー側にとってもフランチャイジー側にとっても大切なものです。
その理由を説明しましょう。
まず、フランチャイザーにとっては、このロイヤリティがフランチャイズビジネスにおける収入源になります。
フランチャイジーが定期的に支払ってくれるロイヤリティを集めて、本部としてのビジネスを円滑に進めることができるのです。
フランチャイジーにとってのロイヤリティの大切さは次のようなことです。
- フランチャイザーのブランド力や価値を受け継げる
- フランチャイザーから安定したサポートを継続的に受けられるようになる
フランチャイズロイヤリティのタイプ
フランチャイザーからのサポートへの対価としてフランチャイジーが支払うのがロイヤリティですが、いくつかタイプがあるので確認してみましょう。
定額方式
定額方式は、フランチャイジー側が特定の期間ごとに定額(一定の料金)をフランチャイザーに支払うロイヤリティの方式です。
1ヶ月ごと、1年ごとなどといった感じです。
定額方式のメリットとしては、支払う金額が決まっているので、今後の財務計画を立てやすいことです。
安定したコスト管理ができます。
また、売り上げが大きくなったときは、ロイヤリティ額が低く感じられる場合もあるでしょう。
定額方式のデメリットは、売り上げが少ないときに負担が大きくなることです。
売り上げが伸び悩んでも一定額のロイヤリティを支払わなければいけないので、儲けが減ってしまいます。
売上歩合方式
売上歩合方式は、フランチャイジーの売り上げに応じた一定割合の料金をフランチャイザーに支払うロイヤリティの方式です。
1ヶ月間の売り上げ高の×%ということですね。
売上歩合方式のメリットは、売り上げと連動しているので、売り上げが少ないときは支払う額も低くなることです。
そのため、負担感が抑えられるでしょう。
また、売上歩合方式ではフランチャイジーが成果を上げるほどフランチャイザーも儲かるので、サポートや指導により熱心に取り組んでくれるというメリットもあります。
デメリットとしては、売上歩合方式の割合が高いと、売り上げを増やしても手元に残る利益がそれほど伸びないことがあることです。
粗利分配方式
粗利分配方式は、毎月の粗利から一定割合ずつをフランチャイザーとフランチャイジーで分け合うロイヤリティの方式です。
粗利または粗利益というのは、フランチャイジーの売り上げから売り上げ原価を差し引いた利益のこと。
この方式のメリットは、割合が変わらなければ、売上歩合方式よりもフランチャイジーが支払うロイヤリティの額は少なくなることです。
売り上げそのものだけを見るのではなく、コストも考えてくれての支払い方法になるので、フランチャイジーの負担も軽減されるでしょう。
コスト管理も含めての計算もできるので、より効率的な運営に向けての努力もしやすいです。
ただ、契約内容が複雑になりやすいのがデメリットでしょう。
業種別にフランチャイズロイヤリティの相場を紹介!
ここからは記事のメインテーマである「フランチャイズロイヤリティの相場」を紹介します。
業種ごとに相場がどうなっているか、確認してみましょう。
飲食店のロイヤリティ相場
飲食店フランチャイズに加盟した場合のロイヤリティ相場は以下の通りです。
・売上歩合方式の場合➡️売り上げの3~10%程度
・粗利分配方式の場合➡️粗利の3~10%程度(粗利分配方式は飲食店業界ではあまり採用されない)
飲食店フランチャイズでは売上歩合方式が採用されることが多く、売り上げ額に応じたロイヤリティの額になっています。
金額としては他の業界よりも低めに設定されていますが、その理由は材料費や人件費、賃料など原価率が高く、収益性が低い業界だからです。
ロイヤリティの額が低い主な飲食店を挙げてみましょう。
店舗名 | ロイヤリティ | フランチャイズの特徴 |
やよい軒 | 一律3% | 「ユニットFC制度」を採用し、フランチャイジーに建物や設備を貸し出す |
株式会社アントワークス | 税抜き売り上げ2%+消費税 | 10~20坪/20~30席が標準で、ファサードは黒・白・赤を基調カラーとし、地域や物件に合わせてデザインしている |
カフェ・ド・クリエ | 純売り上げ高の3% | 路面店やオフィスビル、商業施設などが出店場所 |
ドトール | 売り上げ高(税抜)の2% | 40年以上、1,000店舗を超える店舗運営実績 |
上島珈琲店 | 月額税抜き売り上げ高の2%(別途消費税) | 店舗設計|経営ノウハウ|メニュー支援やSVによる運営サポート/教育システムなどがある |
マクドナルド | ♦ロイヤルティー➡️3%(店舗の合計売り上げに基づく割合) ♦レントロイヤルティー➡️店舗の合計売り上げに基づく一定割合。または、固定ベースレント金額 ♦広告宣伝費➡️4.5% インフラサービスフィー➡️0.7% |
店舗デ|インと新店舗開店や既存店の改装などのサポートがある |
大阪王将 | ♦店舗運営指導費➡️月額純売り上げの2%(開店月から1年間) ♦商標使用料➡️月額純売り上げの1%(加盟期間中) |
オーナーの裁量を尊重し、自由に店舗運営をおこなっていただきながら、充実したサポートを受けられる |
カプリチョーザ | ♦1店舗目以上4店舗目以下の開店店舗➡️総売り上げ高の6% ♦5店舗目以上9店舗目以下の開店店舗➡️総売り上げ高の5% ♦10店舗目以上の開店店舗➡️総売り上げ高の4% |
本場イタリア食材にこだわりながらも低原価率 |
コンビニエンスストアのロイヤリティ相場
皆さんにもおなじみのコンビニエンスストアのフランチャイズ。
コンビニのロイヤリティの種類は粗利益分配方式になっていることが多いです。
その相場は30~70%程度で、かなり高めです。
ただ、売り上げに対する割合では3~5%なので、少し低くなります。
主立ったコンビニのロイヤリティ額を見てみましょう。
セブンイレブンのロイヤリティ
セブンイレブンのフランチャイズロイヤリティは「セブン-イレブン・チャージ」という名称になっています。
まず、土地や建物を自分で用意できる場合(Aタイプ)の「セブン-イレブン・チャージ」の額は以下の通りです。
- 売り上げ総利益に45%の率を乗じた金額
[24時間営業の場合は43%]
※売り上げ総利益とは、売り上げ高から売り上げ商品原価を差し引いた利益額
「セブン-イレブン・チャージ」には減額制度も設けられています。
セブン-イレブン・チャージ減額として
売り上げ総利益 | 550万円超/月の店舗 | 550万円以下/月の店舗 |
---|---|---|
24時間営業店 |
|
▲月額200,000円 |
非24時間営業店 |
|
▲月額70,000円 |
上記セブン-イレブン・チャージ減額に加え、
満5年経過した開店月の翌月から最大3%チャージを減額
上記引用元:株式会社セブン-イレブン・ジャパン オーナー募集
次は、土地や建物を本部側が用意する場合(Cタイプ)の「セブン-イレブン・チャージ」の額です。
- 売り上げ総利益にスライドチャージ率を乗じた金額
☆スライドチャージ率の割合
- 売り上げ総利益が250万円以下➡️54%
- 売り上げ総利益が250万円以上400万円以下➡️64%
- 売り上げ総利益が400万円以上550万円以下➡️69%
- 売り上げ総利益が550万円以上➡️74%
減額制度の概要は以下のようになっています。
開店時からのセブン-イレブン・チャージ減額として
売り上げ総利益 | 550万円超/月の店舗 | 550万円以下/月の店舗 |
---|---|---|
24時間営業店 |
|
▲月額200,000円 |
非24時間営業店 |
|
▲月額70,000円 |
上記セブン-イレブン・チャージ減額に加え、
満5年経過した開店月の翌月から最大3%チャージを減額
上記引用元:株式会社セブン-イレブン・ジャパン オーナー募集
ファミリーマートのロイヤリティ
ファミリーマートフランチャイズのロイヤリティには4つのパターンがあるので、確認してみましょう。
契約タイプ | ロイヤリティ | 特徴 |
1FC-A | ♦営業総利益のうち以下の部分 ♦250万円以下の部分➡️49% ♦250万円超、350万円以下の部分➡️39% ♦350万円超の部分➡️36% |
土地・建物・店舗・内装設備工事をオーナーが負担 |
1FC-B | ♦営業総利益のうち以下の部分。 ♦250万円以下の部分➡️52% ♦250万円超、350万円以下の部分➡️42% ♦350万円超の部分➡️39% |
土地・建物をオーナーが負担し、店舗・内装設備工事費用もオーナーが負担するが、内装設備工事の一部は本部が負担してくれる |
1FC-C | ♦営業総利益※のうちの以下の割合。 ♦300万円以下の部分➡️59% ♦300万円超、450万円以下の部分➡️52% ♦450万円超の部分➡️49% |
土地・建物を本部が負担し、内装設備工事費用はオーナーが負担 |
2FC-N | ♦営業総利益のうちの以下の割合。 ♦300万円以下➡️59% ♦300万円超、550万円以下の部分➡️63% ♦550万円超の部分➡️69% |
土地・建物・内装設備工事費用すべて本部が負担 |
ローソンのロイヤリティ
ローソンのフランチャイズロイヤリティの額は以下のようになっています。
契約タイプ | ロイヤリティ | 特徴 |
FC-Cn 契約 | 総荒利益高に対して、スライドチャージを乗じた金額 ♦300万円以下の部分➡️45% ♦300万円を超え、450万円以下の部分➡️70% ♦450万円を超えた部分➡️60% ※営業時間が24時間に満たない店舗は、上記各チャージ率に3%加算したものがチャージ率 |
♦土地・建物を持っていない ♦新規オープン予定の店舗や既営業中店舗 ♦契約期間がオープンから10年間 |
FC-5Cn 契約 | 総荒利益高に対して、スライドチャージを乗じた金額 ♦300万円以下の部分➡️46% ♦300万円を超え、450万円以下の部分➡️71% ♦450万円を超えた部分➡️61% ※営業時間が24時間に満たない店舗は、上記各チャージ率に3%加算したものがチャージ率 |
♦土地・建物を持っていない ♦新規オープン予定の店舗や既営業中店舗 ♦契約期間がオープンから5年間 |
FC−Bn 契約 | 総荒利益高に対して、次の率を乗じた金額 ♦300万円以下の部分➡️41% ♦300万円を超え、450万円以下の部分➡️36% ♦450万円を超え、600万円以下の部分➡️31% ♦600万円を超えた部分➡️21% ※営業時間が24時間に満たない店舗は、上記各チャージ率に3%加算したものがチャージ率 |
♦土地・建物を持っている ♦ご自分の土地・建物で新規オープン ♦契約期間がオープンから10年間 |
美容室・エステのロイヤリティ相場
続いて、美容室・エステのフランチャイズロイヤリティ相場を確認してみましょう。
美容室のロイヤリティ相場
・売り上げ歩合制の場合➡️売り上げの5~10%程度
エステのロイヤリティ相場
・売上歩合方式の場合➡️売り上げの3~10%程度
主な美容室・エステのロイヤリティの金額を見てみましょう。
美容室・エステ名 | ロイヤリティ | 特徴 |
11cut(美容室) | 6%(4店舗以上は減額) | 無駄をカットした高収益の経営システム |
mod’s hair(美容室) | ①技術売り上げの5%(最低補償額の設定有り) ②商品売り上げ(PB商品を除く)の5% |
フランチャイジーのことをBS(Brand Share)店と呼び、同じ「mod’s hair」のブランドをシェアするビジネスパートナーとして考えてくれる |
マイスタサロン(美容室) | ♦mysta® ライセンス契約➡️なし ♦by emt® フランチャイズ契約➡️15万円 |
♦mysta® ライセンス契約:既に美容室を経営されている方、独立開業される方向け ♦by emt® フランチャイズ契約:異業種参入の方向け |
LIME(ハイフ専門エステサロン) | 12万円(スタッフ1人、ベッド1台で運営したとき) | 未経験者でも使用可能なハイフマシンを導入し、2日間の研修で使いこなせるようになる |
ラダシア(タイ古式マッサージ&バリニーズアロマサロン) | 売り上げ100万(税別)を超えてから発生し、売り上げの5%となる | 増店したり、新しい加盟店を紹介したりすると、ロイヤリティが還元される |
フランチャイズロイヤリティに関する注意点をチェック
フランチャイズのロイヤリティ相場を紹介しましたが、このロイヤリティに関して注意していただきたいことがあるので、チェックしてください。
ロイヤリティと提供されるサポートとの兼ね合いが大事
フランチャイジーはフランチャイザーにロイヤリティを支払うことでさまざまなサポートを受けられるのですが、その兼ね合いがどうなっているかが大事なポイントです。
フランチャイジーとしてもそれ相応の金額のロイヤリティを支払う以上、丁寧なサポートを受けたいはずです。
そのため、契約前にどのようなサポート提供があるのかしっかりチェックしておかないといけません。
悪徳フランチャイズの場合、高額なロイヤリティだけ取って、サポートの方は不十分・不適切ということがよくあります。
そのようなところに騙されてはいけませんよ。
反対にサポートが充実しているフランチャイズなら、ロイヤリティを支払う価値も十分あります。
不当に高いロイヤリティになっているときは契約しないこと
フランチャイジーが支払うことになるロイヤリティですが、不当に高い価格に設定されていることがあります。
ロイヤリティが高すぎると、多少売り上げが上がっても採算が取れなくなるかもしれません。
それではフランチャイズに加盟するメリットも享受できなくなってしまうので、ロイヤリティがあまり高すぎる額に設定されているところとの契約は見合わせましょう。
ロイヤリティが不当に高いかは相場との比較で確認できます。
安すぎるロイヤリティには要注意!
ロイヤリティの支払いはフランチャイジーにとっても大きな負担になりやすいので、できるだけ安く設定されているところを選びたくもなるでしょう。
その気持ちは理解できるのですが、あまり安すぎるロイヤリティが設定されているフランチャイズには要注意です。
そのようなフランチャイズの場合、ただ加盟店を増やせばいいだけというケースもあるし、サポートが丁寧でないという場合もあるかもしれません。
サービスで安くしているケースもあるでしょうが、かえって後で損をすることもあるので、慎重に選ぶ必要があります。
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